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パネルディスカッション「2020年に求められる人材」 2/2

カテゴリー: 未分類 — @ 2010年3月25日

昨年11月19日(木)にIKLSが多摩大学と共催したパネルディスカッション「2020年に求められる人材」の要旨2回目を掲載します。

(2)それでは、我々個人はどうすればよいのか

徳岡:タイムマネジメントが重要。時間の使い方を工夫することが大事だと思う。自分の時間をどういうストーリーで使うのかだと思う。主体的に生きるには、時間をどう使うのかの絵を描くことがとても大事だ。それができると、今の仕事、今の仕事以外、将来やりたいことための準備などにそれぞれどれだけ時間を使うのかとなってくると思う。上司には簡単にはNOとは言えないので、そこのストーリーがないと流されてしまう。

橋本:Googleなどが一般化して誰でも情報を得る能力には差が出なくなってきているなかでどう差をつけるのかを考えると、人から得る情報、すなわち自分の人脈から得た情報が大事になってくる。そういうときに教えてもらえる人とそうでない人がいて、ふんぞり返っている人、強そうな人は教えてもらえにくい。そうなるとさっきの話に重なるが、コンタクティビティというか助けてもらう能力が重要になると思う。そして、そのような人間関係を創発するためには場が重要になる。オフラインの世界では少数の人間としか繋がれなかったのが、ネットの世界では無数の人とつながることができる。そう考えるとインターネット使って人とつながることが、とても重要になってくる。

(3)そのような人間観は今のリーダーのモデルやあり方とどこが違うのか

徳岡:今は個の時代から関係性の時代に変わってきている。そして、ITは関係性を紡ぐツールとして重要性が増している。米国流のITは個に対する信奉が強くあるが、日本のリーダーは単に繋がるだけで善しとするのではなく、日本流の価値観をどう活かせるかまで考えないといけない。繋がっていく中で日本的な価値観を再現していかないと、日本発のグローバリゼーションにはなっていかない。そうなると、リーダーには力とか個とか権力とかではなく、文化や教養などのバリューへの洞察が重要になってくる。

紺野:我々が今置かれているコンテクストは、どうやって社会人教育をするか、個々の人はどうやってエンプロイアビリティを高めていくか、しかも会社から言われてではなく自分自身でどう考えていくのかということ。今までの議論からわかるのは、これまでは個の力を高めていくのが重要だったが、これからは関係性のことをかなり意識した能力を培っていかないといけないということ。そうでないと、これから先必ずしも利益を上げるのではなくても、少なくとも楽しい人生は送れないだろうと言えるのではないか。

橋本:変わると言っても日本が引きずっているものは根強くある。山本七平の「空気の研究」という本があるが、日本に空気があるのは当然のことで、それをいかに利用するかだと思う。例えば日本には本音と建前が両方あることが問題だと言われるが、例えばオフィシャルな命令体系とネットのなかで両方投票してみるなど、日本の組織風土をうまく生かした形で意見をまとめることが重要なのではないかと思う。また、最近知ったのだがダイバーシティは略で実は英語ではDiversity & Inclusion または Diversity & Inclusivenessと表記され、包容していくことが前提にある。今は包容・受容を「日本的」とつけてデザイン出来る人がスペシャルデザイナーとして求められているのだと思う。

徳岡:私は個の時代から関係性の時代へと関連して、ブランドの時代からレピュテーションの時代へと言っている。ブランドは自分から打ち出すもので、レピュテーションは相手からどう受け止められるか。関係性の時代には自分がどう受け取られているかが大事。そのためには3つの要素がある。1つは説明力、ロジカルに説明出来る力。でも、それだけだと中身がなくただ言っているだけという話になってしまう。中身を感じてもらうにはあとの二つが大事で、そのうちの一つが立ち位置力。自分がどのスタンスで行くのか。イエスかノーかをはっきりさせた上で語ること。もう一つは、覚悟。覚悟がないとレピュテーションは生まれない。信じてもらえない。この3つが揃うとレピュテーションが起きる。

(4)まとめ

紺野:お二人の話を聞くにつけ、今はハードなアングロサクソン的、競争的、個人主義的なものではなく、ダイバーシティとかコンタクティビティといったもう少し日本的なものも含みうるような新しい側面が出てきていて、それがグローバルにも意味を持つようになってきたという時代の変化を暗示していたように思う。今世界にはアメリカ型、欧米型、中国などの計画経済型の3つのタイプの資本主義が存在すると言われている。アメリカ型の資本主義は崩壊してしまったので、恐らくアメリカは第4の資本主義、すなわち資本主義のイノベーションを始めようとしている。そういうなかで、日本的と括ってしまって良いか分からないが、今日議論されたような弱さなどが新しい資本主義の要素だとすると、日本でもなにか新しいものが生まれてくる可能性があるのではないかと思った。日本のグローバル化を考えると、我々自身がどうやってグルーバルの中で生きるのかということも含めながら勉強していけるような場が必要だと感じた。

以上

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